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でやってしまうことになる。
その結果がどうなるかといえば、A、Bクラスの史料的価値の高い模型を、見るも無惨な状態にしてしまうのである。しかし、そう言うのは著者ら研究者たちだけで、ご当人も依頼した文化財関係者もよく修理できたと得意なのだから始末が悪い。たとえば、寛延2年(1749)奉納という数少ない江戸中期のBクラスの縮尺10分の1、280石積弁才船が、船首の五尺、垣立(かきだつ)、筒廻り(つつまわり)、矢倉廻り、艫廻り(ともまわり)などすべてに全くでたらめな修理が加えられ、折角の好史料を台無しにしてしまった例がある。これでは修理でなく、破壊である。
こうした修理がいかに無茶であるかは、古建築などの文化財修理の場合を考えてみればわかることで、たとえば専門家による考証や監修なしに、その辺の家大工に文化財修理を任せるなぞ考えられもしないであろう。ところが和船模型ではそれが許されている。これは和船史研究の歴史が浅く、国や自治体が和船模型の文化財的価値を認めていないところに原因するのだか、関係者の配慮を切に望むものである。

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1,000石積合の子船(弁才船の船体に洋式の帆と舵を付けた和洋折衷(わようせっちゅう)の船)復元模型

縮尺:1/20所蔵:船の科学館

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高瀬船復元模型(「川船鑑(かがみ)」より)

縮尺:1/20所蔵:船の科学館

 

 

 

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